ワストウォーターのフットパスにて |
私たちが選んだのは南側の道。地図で見る限り、北側の道は舗装されていて湖の岸より少し内陸にあるのに対して、南側の道は岸沿いのナショナルトラスト所管のフットパス(foot path)。南側の方が楽しめるだろうという安易な憶測でした。デイビッドがキャンプサイトのお姉さんに聞いたところ、南側の道はけっこうハードだとのこと。私だったら何がハードなのか聞くところですが、あまり深く考えず、まあ昨日のハイキングよりは楽に違いないと、再び重いキャンプギアを担いで出発したのでした。
フットパスの始めは平たんな道。湖もすぐそこで、景色も楽しみながら、今日は楽だね~と言いながら歩きました。ところがほどなくして、道がだんだんぬかるんできて、あたりは湿地帯のような場所に。勢いで通り抜けようとしたら、深みにはまってひざ下まで浸水。水たまりと泥道・・・ハードってこのことかねえと笑いながら、とりあえず湿地帯をクリア。ちなみに気温はおそらく10度ほど。濡れた靴下と靴は冷たい!やっぱり選んだ時期を間違えたと思います・・・
次に現れたのは川。フットパスはどこだ?!地図を見ると、フットパスはどうやらこの川を突っ切っている。すでにひざ下浸水状態の私は、ためらうことなくズブズブと川を横断。デイビッドも、この際濡れてしまえと、私に続いてズブズブ・・・靴下とハイキングシューズの中に貯まった水を絞りだし、昨日は急斜面と嵐、今日は水に濡れる日なんだね~と、これでも笑ってさらに進みました。
道はだんだんと細くなり、小石と岩の道になりました。重い荷物でバランスを取りながら歩くのはきつい。道は湖のすぐ脇にそびえる丘の斜面。足を滑らせたら湖へ転がり落ちそうでした。
最大の難関はここからでした。湖沿いにそびえる丘は土砂崩れ頻繁におきるようで、その跡らしき箇所を何度も通らなければなりませんでした。道らしきものは全く見えず、岩と小石が積もった斜面を両手も使って這うように、横歩きのロッククライミングのように進みました。古い跡地は安定してはいるものの岩が大きく、新しい跡地は不安定で岩や小石がぐらつきました。重い荷物がさらに足かせに。さらに悪いことに、ぽつぽつと雨が降り出しました。雨でぬれた岩肌は滑りやすく、何度か足を滑らせました。次はどの岩へ足をかけようか慎重にならざるを得ず、いらいらと恐怖を感じました。
そこへ追い打ちをかける様に、日暮れが迫ってきました。 日が暮れたらこの付近は真っ暗になります。体力と精神力と時間との勝負でした。私のペースが遅かったので、デイビッドが先に行って荷物をおろし、私のところまで戻って今度は私の荷物を少し先まで運ぶ、という手段に出ました。デイビッドが運んでくれた距離を私は荷物無しで歩き、またデイビッドが迎えに来るまでしばらく背負って、また荷物を運んでもらう、ということを繰り返しました。荷物なしだとずいぶんスピードを上げて歩くことができました。これを3回、4回くらい繰り返し、ようやく土砂崩れ地帯を抜けました。あとは割と安定した道を歩くのみ。足がふらふらになっているのを感じながら、日没までに脱しなければと必死で歩き続けました。
そしてようやくたどり着いたフットパスの終点。時間は7時少し前。日没まであと30分ほどでした。薄暗いワストウォーターはいかにも気味悪い雰囲気。それでも歩き終えた達成感で、何とも神秘的で美しく見えました。笑いながら涙がでました。
ここでめでたしめでたし・・・と言いたいところですが、最後の試練が待っていました。 この日は湖沿いのユースホステルに泊まる予定でした。地図で見る限り、ここからあと2,3キロ、ゆっくり歩いても1時間くらいのはずでした。念のため、付近にいたセキュリティーのおじさんに道をたずねると、別のルートを教えられました。あまり深く考えず、言われたルートを歩き出しました。途中で、これはやっぱり遠回りだと気づきましたが、ほぼ日は沈み、戻る時間はないと思いそのルートを進みました。セキュリティーのおじさんは、車で行く道しか知らないようでした。歩道を行けばずっと速かったのです。デイビッドはあとで相当このおじさんを恨んでいました・・・
日はすっかり沈んでいましたが、その日は月明かりが明るく、漆黒の闇というわけではありませんでした。道路標識は懐中電灯を照らして読めました。私は何とか早歩きする体力が残っていたものの、私の荷物を背負って何往復もしたデイビッドはぐったりとして、私のペースにようやくついてきているという様子でした。途中で数回道を尋ねながら、結局2時間ほどあるいてユースホステルに到着しました。
ところが。この日はなんとユースホステルが貸切り。この季節はハイシーズンではないので、予約しなくても大丈夫だろうとたかをくくっていたのが間違いでした。無計画主義はやっぱりリスキーだと、ほとほと反省しました。ユースホステルのオーナーは外にテントをはるのは構わないと。外は寒いし暗いし体はヘトヘト。ユースホステルに泊まれないという事実はかなり堪えました。デイビッドはこの時点で、空腹と疲れで気分が悪くなっていたようです。外に出てテントを張ろうとしたものの、座り込んでしまいました。目には涙・・・
これはなんとかしなければ。私は助けを求めにユースホステルに戻りました。オーナーはもう仕事を終えて帰ってしまっていました。ドアを開けてくれた宿泊者のおじさんに事態を説明。外は暗いし、疲れ切ってとてもテントは張れないと。他の女性も話を聞きつけて相談に乗ってくれました、結局、近くのイン(宿泊施設付のパブ)まで車で送ってもらえることになりました。近くと言っても歩いたら30分くらいの距離。本当に助かりました。
インに着くと、ちょうど一部屋あいているとのこと。ユースホステルより値は張りましたが、夕飯もすぐにパブで注文できて、プライベートルームで、朝食付き、テントよりもちろん温かい!ということで即決。一人35ポンドくらい、夕食も頼んだので一人40ポンドくらいになったと思います。ユースホステルは素泊まり・シェアルームで18ポンド、そこに食事がついたと思えばインも決して高すぎない、むしろサービスがいいのでユースホステルより結果ベターかもしれません。
9時を過ぎていました。パブの食事はもうピザだけだったので、ピザを注文、部屋の準備ができるのを待って、ピザを部屋に運んでもらいました。デイビッドいわく、このピザがキャンプ中で一番おいしかったと(笑)部屋も綺麗で、暖かくて、おなかも満たされて、本当にほっとしました。ほっとして、デイビッドも元気を取り戻して、気が一気に緩んで涙が出ました。怖かった一日がようやく終わりました。よかったよかった・・・
次回に続く。
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